役職が上がる話をされて、周囲は「よかったね」と言う。本人は喜んでいないのに、お祝いする空気だけで話が進む。
これから誰かの進捗を追い、会議で数字を説明し、問題が起きたら呼ばれる。その役目を思い浮かべるほど、断る方がおかしいという顔をされるのが腹立たしいです。
会社で昇進したくないのは、手に入る肩書より、その後の生活が嫌だからかもしれません。上へ行きたいと思わない自分を直すところから始めなくていいです。
昇進の希望を聞かれている段階なら、「昇進は希望していません」と、自分の希望はそのまま答えられます。会社の都合で空いた役職を埋めることまで、人生の目標にする必要はありません。
祝っているのは、私の生活が良くなるからですか
「期待している」「そろそろ次の段階だよ」。そう言われても、その先の一日を過ごすのは自分です。
役職の名前が変わったら嬉しいのか。他人の仕事の進み具合まで気になる毎日を送りたいのか。家へ帰ってからも、明日の会議で何を言われるか考えたいのか。
会社が用意した上り坂を、こちらが登りたいとは限りません。登るのが当たり前という顔で「次」を置かれるたびに、今の自分では足りないと採点され続ける。会社へ来ているだけでもう十分嫌なのに、その場所でさらに責任のある人間になることまで喜ばされる。冗談じゃありません。
「向上心がない」と言われることもあるでしょう。でも、部下の面倒や部署の数字を自分の心配事へ加えたい気持ちを、持っていなければならないとは思いません。
責任を引き受けたくない。そのままの理由では都合が悪いから、「自信がつけば変わる」「経験を積めば面白くなる」と修理を始めようとする。こちらが嫌だと言っているものを、欲しがれる人間に作り替えるな、という話です。
会社の利益まで全員で心配しろという要求なら、会社の利益を自分の責任にしたくない話に近いです。ここで嫌なのは、役職という形で、その面倒を今後の自分へ固定されることです。
給料が増えるとしても、欲しくない役目はある
昇進を望まないと言えば、「給料が上がるのにもったいない」と返されるかもしれません。
増える給料は欲しいです。だからといって、それと一緒に渡される役目まで欲しくなるわけではありません。金が要らないふりをしなくても、仕事を増やしたくないという気持ちは残ります。
月々の収入が増えても、毎日気にする相手や、逃げられない会議が増えるなら、自分にとっては割に合わないかもしれない。その損得を、役職が上がるかどうかだけで他人に決められたくありません。
「どうせ給料は大して変わらない」と、すべての会社について言い切る必要もないです。十分に増える場合でも、自分がその暮らしを選びたいかどうかは別に残ります。
反対に、昇進しないことで昇給の機会が限られたり、会社からの見られ方が変わったりする可能性もあります。希望しないと言えば待遇も仕事も全部そのままで済む、という保証はできません。
それでも、上がらなかった給料だけを損に数えて、引き受けた役目で失う気楽さをゼロ円にするのは、会社に都合のいい計算です。そこまでして得た肩書を、家のソファへ置いて代わりにくつろがせることはできません。
会社の評価が低いと感じる苦しさは、会社の採点と自分の価値を分ける話で扱っています。今回の話は、評価を取り戻して昇進する方法ではなく、そもそもその役目を欲しがっていないという希望です。
「今のまま」を、成長待ちの仮住まいにしない
「今は昇進を考えていません」と答えたら、「じゃあ来年には」と話をつながれる。本人が言った「今は」を、会社が勝手に準備期間へ変えてくる。
来年も希望しないなら、それでいいです。人の面倒を見たい日がいつか来ることまで、見込んでおく必要はありません。
昇進しない間も、役職者の代わりに会議をまとめたり、後輩の世話を引き受けたりして、役に立つところを見せようとしなくていいです。それでは肩書だけ付かず、嫌だった役目はもう始まっています。
ここで扱っているのは、昇進の希望や打診に対する本人の気持ちです。すでに出た人事発令を無視すれば問題なく済む、という意味ではありません。会社ごとの発令や待遇の扱いを一律に決める話と、自分がその役職を欲しいかどうかは混ぜたくないです。
出世しない将来をすべて破滅として想像してしまうなら、会社に合わせない社員の末路をどう見るかという話もあります。昇進候補から外れることを、会社が呼ぶとおりの敗北にしなくていいです。
会社が欲しいのは、次の役職を引き受ける人でしょう。私は、他人のトラブルまで頭に入れて眠る暮らしを、これ以上増やしたくない。そこが一致しないだけの話を、こちらの未熟さにしないでほしいです。
出世欲がないまま給料を受け取りたい。会社で偉くなることより、会社のことを考えなくて済む時間が欲しい。そんな本音を、立派なキャリア観へ言い換えて提出する気にはなれません。
『モンスター社員の教科書』には、会社に適応しないモンスター社員の実例と、少しラクになる考え方をまとめています。「次はもっと責任を持とう」という期待を、もう自分の夢にしたくない人へ。会社が喜ぶ将来を描けなくても、読んでみてください。



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