社内報に載っている会社と、毎朝行きたくないと思いながら通っている会社が、どうも同じ場所に見えません。
誌面では社員が笑い、部署を越えた交流が紹介され、最後は会社の未来を明るく語っている。こちらは今日も帰る時間を待っているのに、紙の上ではずいぶん楽しそうな職場が出来上がっています。
社内報はいらない。そう感じるのは、会社のいいところを見つける努力が足りないからではありません。自分が苦しんでいる場所を、素敵な仲間と成長できる場所として見せられても、同じ気持ちにはなれないのです。
しかも、読むだけで終わらず、「次の社員紹介をお願いします」と自分へ順番が回ってくる。休日の写真、趣味、仕事への抱負。会社へ行くことさえ嫌なのに、会社の中で楽しそうに生きている人間の素材まで提出させられる。そのしつこさに、心の底から嫌気がさします。
誌面が明るくても、私の一日は明るくならない
上司に嫌な言い方をされた日も、面倒な仕事を押しつけられた日も、社内報には「風通しの良い職場」と書いてある。
あの文章を読んで、自分の受けた扱いまでなかったことにはできません。むしろ、こちらが嫌だったことは載らず、会社に都合のいい表情だけが残る。その紙面を眺めていると、会社の中にいるのに、会社が語る社員の中には自分がいない気がしてきます。
「読めば会社への理解が深まる」と言われても、会社が見せたい姿を知ることと、会社を好きになることは別です。毎月届くからといって、毎月好きになり直す義務まで引き受けた覚えはありません。
必要な手続きや予定の案内が載っていれば、その用件だけ読む。そこで止めたいです。社員インタビューを隅々まで読み、感銘を受けた箇所まで探して、職場への愛着を育てる課題にはしたくありません。
「今月号、どうだった?」と聞かれても、特に感想が浮かばないことはあります。無理に「皆さんの熱意に刺激を受けました」と答えると、読んだ後まで会社の欲しい自分を演じることになる。給料と休みが欲しい人間に、毎月感動の宿題まで配らないでほしいです。
同じ圧力を、毎朝の訓話や唱和で受けているなら、会社の朝礼はいらないと感じる話もあります。ここで嫌なのは、誌面に描かれた会社へ気持ちを合わせ、最後は自分までその一員として掲載されることです。
「趣味を一つだけ」で、会社の外まで差し出したくない
社員紹介の欄に、休日の過ごし方と写真を出してほしい。難しい話ではないでしょう、という顔で頼まれる。
難しいのではなく、出したくないのです。
休みの日に何をしているか。誰と、どこへ行ったか。部屋で何を楽しんでいるか。会社から離れている時間まで、同僚へ親しみを持たせるための話題に変えたくありません。何もせず寝ていた休日だって、面白い紹介文に加工しなくていいはずです。
「社員の素顔が分かると、交流のきっかけになる」。その交流を増やしたいと思っていない人間にとっては、掲載後に話しかけられる理由が増えるだけです。自分の趣味を、廊下で上司に絡まれる入口にしたくない。
任意の社員紹介や写真提供への協力を求められているなら、「今回は掲載を辞退します」「私生活の写真は提供しません」と、嫌な部分をそのまま断る返事があります。面白い代案や、代わりに出てくれる人まで用意する必要はありません。
「趣味の話だけなら」「顔を出さなければ」と言われても、条件が一つ減れば参加したくなるとは限らないです。文章を書く時間も、何を載せるか考える時間も使いたくない。「今回は協力しません」で、こちらから別の素材を探す話へ進めなくていいです。
業務として原稿を担当している場合と、社員の私生活を任意で紹介する企画は同じではありません。ただ、原稿を作る仕事があったとしても、家へ帰ってから自分の写真フォルダを掘り、会社向けに休日を編集することまで自分から付け足したくないです。
自己評価シートの提出で止まっているなら、自己評価に書くことがないときの話へ。担当した仕事を書く欄と、社員紹介で私生活を見せる欄は別です。どちらも「何か書いて」で、自分の全部を会社の提出物にされたくありません。
私の休日は、掲載されなくても完結しています
社内報を作っている側は、社員同士のつながりを見せたいのかもしれません。でも、載る側の私生活まで当然に使える素材として数えられるのは、たまったものではありません。
自分のために遊び、自分のために寝る。その時間を、会社へ戻って説明できるように過ごしたくないです。週末に撮った一枚を見ても、何も撮らずに終えた一日を思い出しても、そこに職場の人間の感想はいりません。
社内報の中で楽しそうに見える社員と、同じ顔ができない。だから自分はおかしいのか、と考え始めること自体が腹立たしいです。会社が用意した明るい誌面へ収まらないからといって、こちらの暮らしが出来損ないになるわけではありません。
会社全体の空気に合わせられず苦しくなっているなら、会社に馴染めないままでいる考え方も読めます。私は、会社の中で愛される登場人物になるより、誌面に出ない自分の時間を残したいです。
『モンスター社員の教科書』で触れられるのは、会社の期待に収まらないモンスター社員の実例と、少しラクになる考え方です。社内報に載っているような社員になれず、会社から離れた時間まで取り上げられそうな日に。会社へ見せる顔を作るのに疲れたまま、読んでみてください。



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